正文 二 - 9

「新年の御慶(ぎょけい)目度(めでたく)申納候(もうしおさめそろ)。……」

いつになくが真面目だと主人が思う。迷亭先生の手紙に真面目なのはほとんどないので、この間などは「其後(そのご)別に恋着(れんちゃく)せる婦人も無(これなく)、いず方(かた)より艶書(えんしょ)も参らず、先(ま)ず先(ま)ず無に消光罷(まか)り在り候(そろ)間、乍憚(はばかりながら)御休被候(くださるべくそろ)」と云うのがたくらいである。それに較(くら)べるとこの年始状は例外にも世間的である。

「一寸参堂仕り度(たく)候えども、兄の消極主義に反して、る限り積極的方針を(もっ)て、此千古未曾有(みぞう)の新年を迎うる計画故、毎日毎日目の廻る程の忙、御推察願候(そろ)……」

なるほどあの男のだから正月は遊び廻るのに忙がしいに違いないと、主人は腹の中で迷亭君に同意する。

「昨日は一刻のひまを偸(ぬす)み、東風子にトチメンボーの御馳走(ごちそう)を致さんと存じ候処(そろところ)、生憎(あいにく)材料払底の為(た)め其意を果さず、遺憾(いかん)千万に存候(ぞんじそろ……(内容加载失败!)

(ò﹏ò)

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