正文 二 - 14

「医者を呼んで見てもらうと、何だか病名はわからんが、何しろ熱が劇(はげ)しいので脳を犯しているから、もし睡眠剤(すいみんざい)が思うように功を奏しないと危険であると云う診断だそうではそれを聞くや否や一種いやな感じがったのです。ちょうど夢でうなされる時のような重くるしい感じで周囲の空気が急に固形体になって四方から吾が身をしめつけるごとく思われました。帰りにもそのばかりが頭の中にあって苦しくてたまらない。あの奇麗な、あの快活なあの健康な○○子さんが……」

「ちょっと失敬だが待ってくれ給え。さっきから伺っていると○○子さんと云うのが二返(へん)ばかり聞えるようだが、もし差支(さしつか)えがなければ承(うけたま)わりたいね、君」と主人を顧(かえり)みると、主人も「うむ」と生返(なまへんじ)をする。

「いやそれだけは人の迷惑になるかも知れませんから廃(よ)しましょう」

「すべて曖々(あいあいぜん)として昧々(まいまいぜん)たるかたで行くつもりかね」

「冷笑なさってはいけません、極真面目(ごくまじめ)な話しなんですから……とにかくあの婦人が急にそんな病気……(内容加载失败!)

(ò﹏ò)

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