正文 三 - 3

「どうも御退屈様、もう帰りましょう」と茶を注(つ)ぎ易(か)えて迷亭の前へす。「どこへ行ったんですかね」「どこへ参るにも断わって行ったの無い男ですから分りかねますが、方御医者へでも行ったんでしょう」「甘木さんですか、甘木さんもあんな病人に捕(つら)まっちゃ災難ですな」「へえ」と細君は挨拶のしようもないと見えて簡単な答えをする。迷亭は一向(いっこう)頓着しない。「近頃はどうです、少しは胃の加減が(い)いんですか」「(い)いか悪いか頓(とん)と分りません、いくら甘木さんにかかったって、あんなにジャムばかり甞(な)めては胃病の直る訳がないと思います」と細君は先刻(せんこく)の不平を暗(あん)に迷亭に洩(も)らす。「そんなにジャムを甞めるんですかまるで供のようですね」「ジャムばかりじゃないんで、この頃は胃病の薬だとか云って根卸(だいこおろ)しを無暗(むやみ)に甞めますので……」「驚ろいたな」と迷亭は感嘆する。「何でも根卸(だいこおろし)の中にはジヤスターゼが有るとか云う話しを新聞で読んでからです」「なるほどそれでジャムの損害を償(つぐな)おうと云……(内容加载失败!)

(ò﹏ò)

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