正文 六 - 1

こう暑くては猫といえどもやり切れない。皮をいで、をいで骨だけで涼みたいものだと英吉利(イギリス)のシドニー·スミスとか云う人が苦しがったと云う話があるが、たとい骨だけにならなくともいから、せめてこの淡灰色の斑入(ふいり)の毛衣(けごろも)だけはちょっと洗い張りでもするか、もしくは分の中(うち)質にでも入れたいような気がする。人間から見たら猫などは年が年中同じ顔をして、春夏秋冬一枚板で押し通す、至って単純な無な銭(ぜに)のかからない生涯(しょうがい)を送っているように思われるかも知れないが、いくら猫だって相応に暑さ寒さの感じはある。たまには行水(ぎょうずい)の一度くらいあびたくないもないが、何しろこの毛衣のから湯を使った日には乾かすのが容易なでないから汗臭いのを我慢してこの年になるまで洗湯の暖簾(のれん)を潜(くぐ)ったはない。折々は団扇(うちわ)でも使って見ようと云う気もらんではないが、とにかく握るがないのだから仕方がない。それを思うと人間は贅沢(ぜいたく)なものだ。なまで食ってしかるべきものをわざわざ煮て見たり、焼いて見た……(内容加载失败!)

(ò﹏ò)

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