正文 七 - 7

帰って見るとは太平なもので、主人は湯がりの顔をテラテラ光らして晩餐(ばんさん)を食っている。吾輩が椽側(えんがわ)からがるのを見て、のんきな猫だなあ、今頃どこをあるいているんだろうと云った。膳のを見ると、銭(ぜに)のない癖に二三品御菜(おかず)をならべている。そのうちに肴(さかな)の焼いたのが一疋(ぴき)ある。これは何と称する肴か知らんが、何でも昨日(きのう)あたり御台場(おだいば)近辺でやられたに相違ない。肴は丈夫なものだと説明しておいたが、いくら丈夫でもこう焼かれたり煮られたりしてはたまらん。病にして残喘(ざんぜん)を保(たも)つ方がよほど結構だ。こう考えて膳の傍(そば)に坐って、隙(すき)があったら何か頂戴しようと、見るごとく見ざるごとく装(よそお)っていた。こんな装い方を知らないものはとうていうまい肴は食えないと諦(あきら)めなければいけない。主人は肴をちょっと突っついたが、うまくないと云う顔付をして箸(はし)を置いた。正面に控(ひか)えたる妻君はこれまた無言のまま箸の(じょうげ)に運動する様子、主人の両顎(りょうがく)の離合開闔……(内容加载失败!)

(ò﹏ò)

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