正文 八 - 6

やがて時間がたと見えて、講話はぱたりとやんだ。他の教室の課業も皆一度に終った。すると今まで室内に密封された八百の同勢は鬨(とき)の声をあげて、建物を飛びした。その勢(いきおい)と云うものは、一尺ほどな蜂(はち)の巣を敲(たた)き落したごとくである。ぶんぶん、わんわん云うて窓から、戸口から、開きから、いやしくもの開(あ)いている所なら何の容赦もなく我勝ちに飛びした。これが件の発端である。

まず蜂の陣立てから説明する。こんな戦争に陣立ても何もあるものかと云うのは間違っている。普通の人は戦争とさえ云えば沙河(しゃか)とか奉(ほうてん)とかまた旅順(りょじゅん)とかそのほかに戦争はないもののごとくに考えている。少し詩がかった野蛮人になると、アキリスがヘクトーの死骸を引きずって、トロイの城壁を三匝(さんそう)したとか、燕(えん)ぴと張飛が長坂橋(ちょうはんきょう)に丈八(じょうはち)の蛇矛(だぼう)を横(よこた)えて、曹操(そうそう)の軍百万人を睨(にら)め返したとか袈裟(おおげさ)なばかり連する。連は人の随意だがそれ外の戦争はないものと……(内容加载失败!)

(ò﹏ò)

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