正文 九 - 3

かくとも知らぬ主人ははなはだ熱なる容子(ようす)をもって一張(いっちょうらい)の鏡を見つめている。元鏡というものは気味の悪いものである。深夜蝋燭(ろうそく)を立てて、広い部屋のなかで一人鏡を覗(のぞ)き込むにはよほどの勇気がいるそうだ。吾輩などは始めての令嬢から鏡を顔の前へ押し付けられた時に、はっと仰(ぎょうてん)して屋敷のまわりを三度馳(か)け回ったくらいである。いかに白昼といえども、主人のようにかく一生懸命に見つめているは分で分の顔が怖(こわ)くなるに相違ない。ただ見てさえあまり気味のいい顔じゃない。ややあって主人は「なるほどきたない顔だ」と独(ひと)り言(ごと)を云った。己の醜を白するのはなかなか見げたものだ。様子から云うとたしかに気違の所(しょさ)だが言うことは真理である。これがもう一歩進むと、己(おの)れの醜悪なが怖(こわ)くなる。人間は吾身が怖ろしい悪党であると云う実を徹骨徹髄に感じた者でないと苦労人とは云えない。苦労人でないととうてい解(げだつ)はない。主人もここまでたらついでに「おお怖(こわ)い」と……(内容加载失败!)

(ò﹏ò)

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