正文 十 - 1

「あなた、もう七時ですよ」と襖越(ふすまご)しに細君が声を掛けた。主人は眼がさめているのだか、寝ているのだか、向うむきになったぎり返もしない。返をしないのはこの男の癖である。ぜひ何とか口を切らなければならない時はうんと云(い)う。このうんも容易なではてこない。人間も返がうるさくなるくらい無精(ぶしょう)になると、どことなく趣(おもむき)があるが、こんな人に限って女にかれた試しがない。現在連れ添う細君ですら、あまり珍重しておらんようだから、その他は推(お)して知るべしと云ってもした間違はなかろう。親兄弟に見離され、あかの他人の傾城(けいせい)に、愛がらりょうはずがない、とあるは、細君にさえ持てない主人が、世間一般の淑女に気に入るはずがない。何も異間に不人望な主人をこの際ことさらに暴露(ばくろ)する必もないのだが、本人において存外な考え違をして、全く年廻りのせいで細君にかれないのだなどと理窟をつけていると、迷(まよい)の種であるから、覚の一助にもなろうかと親切からちょっと申し添えるまでである。

言いつけられた時刻に、時刻がきたと……(内容加载失败!)

(ò﹏ò)

抱歉,章节内容不支持该浏览器显示~

【为了使用完整的阅读功能】

请考虑使用〔Chrome 谷歌浏览器〕、〔Safari 苹果浏览器〕或者〔Edge 微软浏览器〕等原生浏览器阅读!

谢谢!!!

九 - 14目录+书签十 - 2