正文 十一 - 8

「ええ校がなかったら、全く人迹は稀ですよ。……で夜の服装と云うと、手織木綿(ておりもめん)の綿入のへ金釦(きんボタン)の制服外套(がいとう)を着て、外套の頭巾(ずきん)をすぽりと被(かぶ)ってなるべく人の目につかないような注意をしました。折柄(おりから)柿落葉の時節で宿から南郷街(なんごうかいどう)へるまでは木(こ)の葉で路が一杯です。一歩(ひとあし)運ぶごとにがさがさするのが気にかかります。誰かあとをつけてそうでたまりません。振り向いて見ると東嶺寺(とうれいじ)の森がこんもりと黒く、暗い中に暗く写っています。この東嶺寺と云うのは松平(まつだいらけ)の菩提所(ぼだいしょ)で、庚申山(こうしんやま)の麓(ふもと)にあって、の宿とは一丁くらいしか隔(へだた)っていない、すこぶる幽邃(ゆうすい)な梵刹(ぼんせつ)です。森からはのべつ幕なしの星月夜で、例のの河が長瀬川を筋違(すじかい)に横切って末は――末は、そうですね、まず布哇(ハワイ)の方へ流れています……」

「布哇は突飛だね」と迷亭君が云った。

「南郷街をついに二丁て、鷹台町(たかのだ……(内容加载失败!)

(ò﹏ò)

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